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2021年 F3アジア 総評

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Twitter:Prema

これまでのF3アジア

北半球の冬を前に主要フォーミュラシリーズが終了。12月~2月までは間期となるが、この間に開催されるシリーズが F3 Asian Championship(F3アジア)である。以前は通常シリーズとウィンターシリーズの2つの期間に分けて開催されていたが、冬季をメインシリーズに据え一本化する事となった。これによって冬季の短期間開催としては最多のスーパーライセンスポイントが付与される大会となっている。

 

しかしながらアジア・中東地域を中心に開催される事により、この大会ではアジアサーキットを得意とする選手が活躍する傾向にあり、ヨーロッパ地域の選手はニュージーランドで開催されるToyota Racing Series(TRS)に参加する事が一般的だった。だが今年のTRSはパンデミックの影響で海外からの参加が制限される事になり、ヨーロッパからのF3アジアへの参戦が急増する事に繋がった。加えて中国やタイといったF1サーキット以外のコースでのレース開催が、今年は中止となった事も追い風となっている。

今年のF3アジアはUAEの単一国での開催となり、サーキットはドバイ・オートドローム、F1サーキットとしても長年使用されているヤスマリーナサーキットの2つで開催された。F2においても中東ラウンドが存在する事から、ジュニアフォーミュラの選手にとってはこのサーキットを走行する貴重な機会ともなった。

今大会のFIAの規格はフォーミュラ・リージョナル F3であり、タトゥース製のシャシーT-318が使用される。これはFREC及びFルノーEuro、TRSと同じ車両である。FIA F3車両と比べると、パワーが100psほど少ない270ps、重量は同等でDRSは未装着だ。上位カテゴリーから参戦する選手ほどオーバーテイクの難しさに直面する事となるだろう。よって今大会はFRECから参戦する選手の躍進を暗示していた。

 

主な出場選手はF2から周冠宇、ロイ・ニッサニー、ヨハン・ダルバラ。FRECからはパトリック・パスマ、ピエール・ルイ・ショベール。フランスF4から岩佐歩夢、イザック・ハジャール。イタリアF4からはディーノ・ベガノビッチが出場。またFルノーEuroからはディビッド・ビダレスが途中出場している。

 

そしてF3アジアは2/14のバレンタインデーには第4ラウンドを終え、最終の第5ラウンドはヤスマリーナサーキットに戻り開催された。第2/3ラウンドと同じ舞台であるが、これとは異なりグランプリコースでの開催となっている。レースは2/19と2/20にそれぞれレース1/2/3が開催された。

また最終ラウンドは現地の2/19~2/20、日本時間の2/20 (土) 午前1時10分から配信された。

第5ラウンドレース1

https://youtu.be/hLUYrjHsGYc

第5ラウンドレース2

https://youtu.be/SwOiX2vyWko

第5ラウンドレース3

https://youtu.be/fJe5_GgYUNg

 

第4ラウンドまで幾度となくフロントロウに並ぶ周冠宇だが、優勝はここまで第1ラウンドの2勝のみとペースの割に物足りない。迎えた第4ラウンドでは、そんな周を尻目にランキングトップを快走するショベールの活躍が光った。圧倒的な予選ペースを発揮した周を相手にポイント差を広げる事に成功したのだ。これによって1位ショベールと2位周の差は32ポイントに広がり最終ラウンドを迎える事になった。

また第4ラウンドから欠場ディーノ・ベガノビッチとイザック・ハジャールの残したポイントは、まだシリーズランキング4位と5位にとどまっている。6位以下の選手にとってはランキング4位を目指す大きなチャンスが訪れている。

予選

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予選1回目結果:Facebook (F3 Asian Championship Certified by FIA)

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予選2回目結果:Facebook (F3 Asian Championship Certified by FIA)

予選1/2回目ともトップ3が同一となった。ヤスマリーナにおいて6戦3勝と相性の良かったショベールはどちらも振るわず6番手スタートとなっている。周にとってタイトル獲得のチャンスが広がり、ショベールを逆転する絶好の機会が訪れた。

また、好調だったイザック・ハジャールが欠場して以降、彼の波を引き継いだように速さを発揮するのが同じエバンスGPのパトリック・パスマだ。前回ラウンドでは優勝1回の2表彰台を獲得し、その勢いそのままに最終ラウンドにも臨んでいる。

ホンダ期待の岩佐歩夢を含むハイテック勢は、その他のチームと比べるとチームメイト毎の速さは一定であるものの、再び4番手チームとなりトップ10後半付近のポジションを占めた。

 

レース1

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レース1結果:Facebook (F3 Asian Championship Certified by FIA)

前レースにて5グリッドダウンのペナルティを受けたダルバラは8番手スタートとなっている。

5回目のポールスタートとなった周冠宇は、またしても1コーナーでライバルに先行を許す展開となった。奇数列がアウト側のスタートとなる今ラウンドにおいては少しの出遅れによて25ポイントが遠ざかる。周は1コーナー進入までに2番手パスマにインコーナーに付け入られたのだ。1コーナー通過時の順位はトップがパスマ、周、スタネク、マイニと続く。7番手スタートのビダレスは5位までポジションアップ。続いてニッサニー、ショベール、ダルバラまでがトップ8となった。

予選での誤算によってタイトル獲得に暗雲が立ち込めるショベールは、先行する6番手ニッサニーをオープニングラップのバックストレートエンドで捉えた。しかしニッサニーのやや過剰なディフェンスラインは最終ラウンドでも健在で、コーナー進入時にアウト側に並走するショベールにスペースを残さないほどの幅寄せをして接触してしまう。

 

これによりコーナーを曲がり切れずにショベールが直進。コース復帰時にニッサニーの前に出るが順位を譲らずに走行を続けた。しかし数周後には勧告を受けたのか順位を再びニッサニーに譲った。

 

9番手以降では、今大会途中出場のコナーが岩佐をオープニングラップでパス。これによりコナー、岩佐、ボルクバシ、牛島の順番となる。しかし岩佐は中盤にボルクバシ、牛島のオーバーテイクを許し11番手まで後退する。牛島は岩佐をパスした後、ボルクバシのオーバーテイクにも成功した。

レース終盤にはコナーがリタイア。3位走行中で今大会のベストレースを見せていたスタネクも残り数分の段階でホームストレート上にマシンを止めた。

 

これ以上の順位の動きはなく、1位がパスマ、周、マイニ、ビダレス、ニッサニー、ショベールの順でチェッカーフラッグを受けた。レース後パスマとビダレスはイエローフラッグ無視により5秒のタイムペナルティを受け、周が優勝、ビダレスは6位となった。

日本勢では牛島が8位、岩佐は10位となっている。牛島は12番手から8位まで4つポジションを上げる事に成功した。

 

このレースにて周はトップとのポイント差を17にまで縮める事に成功。自力優勝の目はまだないものの、一気に逆転優勝の可能性が高くなった。

レース2

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レース2スターティンググリッド

Facebook (F3 Asian Championship Certified by FIA)

レース1のベストラップ順となるレース2のスターティンググリッドにおいても周がポールポジションを獲得。フロントロウに至っては3レース全てで同じ構図となっている。ショベールにとっては大打撃の7番手スタートとなり、今ラウンドにおけるトップ死守が一層厳しくなった。

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レース2結果:Facebook (F3 Asian Championship Certified by FIA)

レース2のスタートはまさに昨日のレース1のリプレイそのもので、全く同じ展開で周がリードを喪失した。3番手ダルバラは1コーナーで同様にビダレスにインを突かれるが、1コーナーを大回りしてマシンを一部コース外に落としつつもポジションを死守した。

12番手スタートの岩佐はスタート直後11番手争いの渦中にあり、バックストレートに続く第7コーナーでフルクサに弾かれコース外に飛び出した。コースには無事に復帰し大事には至らなかったが、この争いで牛島が先行し11番手を確保した。フルクサは岩佐との接触の直前イン側を走行する牛島とも接触していたが、3台ともに走行を続けている。

オープニングラップのバックストレートエンドの第8コーナーでは各ポジションの激しい争いが展開された。8番手争いではニッサニー、ファリア、ボルクバシが3ワイドで進入し、ニッサニーはタイヤをロックさせたままコーナーを直進しポジションを死守。ボルクバシはファリアをオーバーテイクし9番手に上がった。

12番手を走行する岩佐は今度は16番スタートから混乱を切り抜けポジションを上げていたアンナ・アル・クバイシに追突される。岩佐は多少挙動を乱したものの、ここでも大事には至らなかった。クバイシはそのままコーナーを直進し牛島と岩佐の前にそのまま復帰している。(いいのか)

 

混乱を極めた第8コーナーだったが、しかし事件は直後のコーナーで発生した。6番手を争っていたスタネクにショベールがイン側から激しく接触。ショベールは自身の過失によりレース2を早々に終える事となったのだ。これにより周にとっては大チャンスが到来する。

 

周はその先の11コーナーにて昨日のレース1の雪辱を期そうと、パスマに果敢にアウト側からコーナー飛び込むが、タイヤが温まりきっておらずマシンをスライドさせてコーナーを直進。オーバーテイクは失敗に終わる。

 

その後セーフティーカーが導入され、トップからパスマ、周、ダルバラ、ビダレス、マイニ、ニッサニー、ボルクバシ、ファリア、クバイシ、牛島のトップ10が形成された。岩佐は11番手となっている。

 

レースは残り18分で再開され、直後には再びストレートエンドの第7、11コーナーでのポジション争いが激しくなる。第7コーナーで4位を争うビダレスとマイニは両者インコースライン上でブレーキ勝負を敢行。3番手を走行するダルバラのラインを潰す形となり、ダルバラは接触を避けコーナーをショートカットした。その後ろではクバイシが再びコーナーを曲がり切れずショートカット。1つポジションを上げ8番手とした。(いいのか)

その後の11コーナーではビダレス、マイニ、ニッサニー、ボルクバシの4台がまとまってコーナーに侵入。イン側に飛び込んだマイニが4番手を奪取に成功する。ボルクバシにイン側を取られたニッサニーは再三のオーバーランニッサニーはマイニの前でコースに復帰したものの、コントロールラインまでには6番手ボルクバシにまでポジションを譲っている。

 

クバイシは次の周ではファリアにイン側を突かれ7コーナーで3度目のオーバーラン。もはやストレートエンドで減速し切れていない。8番手に復帰したが、コントロールラインまでにはファリアにポジションを譲り9番手となった。(さすがに)

 

この時点でトップからパスマ、周、ダルバラ、マイニ、ビダレス、ボルクバシ、ニッサニー、ファリア、クバイシ、牛島、フルクサ、岩佐となった。

 

その後残り13分でセーフティーカーが再導入され、残り8分時点でレース再開となった。その後はクバイシがポジションを大幅に落とす他に順位に変動はなくそのままレース終了となった。

 

レース後の審議でファリアに5秒のタイムペナルティ、牛島に1ポジション降格の裁定が下り、8位からフルクサ、牛島、岩佐までが入賞となっている。

このレースで周はショベールを1ポイント上回りシリーズトップに躍り出た。次レースも6番手スタートのショベールにとっては、周のトラブルを待つ以外タイトル獲得は絶望的な状況となっている。

レース3

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レース3結果:Facebook (F3 Asian Championship Certified by FIA)

3度目となった今ラウンドでのポールポジションで、周はようやく1コーナーをトップで通過した。完璧なスタートを決めた周がタイトルをほぼ確実とする中、ダルバラは新品タイヤを装着し2番手パスマに迫った。再三にわたる揺さぶりもパスマには一歩届かない。

 

7番手スタートの岩佐は6番手ショベールに迫るが、バトルの最中、8番手ニッサニーにコース外に押しやられた事が影響し9番手までポジションを落とした。岩佐からのプレッシャーが無くなったショベールはビダレスをオーバーテイクし5番手に浮上。4番手のスタネクに迫っている。その後岩佐はマイニをパス。ビダレスは何らかの理由でポジションを大幅に落とした。

その後セーフティーカーが導入された時点でのトップ10は、トップから周、パスマ、ダルバラ、スタネク、ショベール、ニッサニー、岩佐、マイニ、ボルクバシ、牛島となった。

 

残り18分でレース再開となると、4番手スタネクをショベールが猛攻する。第7コーナーでは昨日のリプレイのようなレイトブレーキング勝負を展開。そのすぐ後ろではニッサニーが止まり切れず、ショベールのリアエンドをかすめて再びのオーバーランをしている。ニッサニーはスタネクの遥か前方でコースに復帰した。

続く第11コーナーでショベールがアウト側からスタネクに並びコーナーに侵入するが、そこには先のコーナーでショートカットし上げたポジションを譲る為にニッサニーがスピードを落としながらコーナーのアウト側を回っており、ショベールは行き場をなくしてオーバーテイクを断念せざるを得なくなった。結果的にショベールにはこれがラストチャンスとなり、以降上位の順位変動はなくそのまま制限時間が終了。

トップ10はレース再開後と変わらず、周が4勝目を挙げてタイトル獲得に花を添えた。

2021年シーズン総評

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Facebook (F3 Asian Championship Certified by FIA)

これにより周はスーパーライセンスポイントを18加算し37ポイントとし、選手権3位のダルバラと共に今年のライセンス獲得に向け大幅に前進した。

選手権2位にはショベールが入り、今年イェンツァーからFIA F3に出走する彼にとっては貴重なライセンスポイントを獲得している。

 

岩佐は欠場したハジャール、ベガノビッチの残した総合ポイント数を更新できなかったものの、フォーミュラ リージョナル F3のルーキーカップではトップとなり、2位にはボルクバシが入った。3位には牛島が入り、全選手中でも唯一となる全戦完走を達成した。

 

今大会での一番のサプライズはe-sportレーサーのセム・ボルクバシの健闘だろう。2018年のF1公認大会ではトロロッソのドライバーとして参加している。2019年にフォーミュラルノー・ユーロカップに2戦スポット参戦した以外に実物のフォーミュラの経験はなく、今大会における総合9位という成績は非常に印象深い。

 

これから各選手はそれぞれ今年のメインシリーズへの帰途へ着く。周とニッサニーはそれぞれUNIヴィロトーシとDAMSからF2に出場。デラッダはHWA Racelabから出走するが、早くも実力不足を露呈する事となった。

ショベールはFIA F3にイェンツァーから、岩佐とスタネクはハイテックから出走する。パスマは新しくなったFREC by AlpineにKICからの継続参戦が決定した。牛島はイギリスF3への参戦継続が既定路線で今年はタイトル獲得を目指している。